ミリ波帯小型マルチセクタアンテナ

  ・研究背景

 近年の無線通信では、ディジタルコンテンツやデータベースの利用の急速な増加に伴い、伝送速度の高速化・大容量化が課題となっています。従来のマイクロ波帯を利用した無線通信システムは、周波数帯域が限られるという問題があります。一方、ミリ波帯ではより広い周波数帯域の利用が期待されています。そのため高速・大容量の情報伝送システムが検討されています。また、波長が1〜10 mmと短いため、システム構成を小型化・軽量化することができます。この特徴を利用して1 Gbps以上の超高速無線LANシステムの研究が進められています。

        



  ・ミリ波帯の利用における問題

 ミリ波帯は自由空間における伝搬損が大きいため高利得なアンテナが必要となります。また、高利得化に伴いビームが狭くなるため、ビームの可変機能が必要となります。この問題に対して、指向性アンテナを切り替えてビームを可変とするマルチセクタアンテナがあります。高利得なアンテナを1セクタに採用することで大きな伝搬損に対応でき、セクタを切り替えることで360度全方向に対応できます。

        



  ・提案アンテナ

 マルチセクタアンテナはアンテナ直径が大きくなるため、小形化が困難という問題があります。この問題に対して、本研究では誘電体を利用した高利得な小形マルチセクタアンテナ(誘電体柱装荷モノポールマルチセクタアンテナ)の設計を行っています。誘電体の導波効果を利用して光を凸レンズで集束するように電波を集束し、狭ビームを形成して高利得を実現します。複数のモノポールアンテナを誘電体柱側面に構成し、給電点を切り替えることでビーム制御を可能とします。また、誘電体内部における波長短縮効果によりアンテナは小形化されます。

        



  ・研究ターゲット

 給電素子以外のアンテナ素子は給電線路から切り離されるため、これらは無給電素子とみなすことができます。そこで、提案アンテナでは所望の放射特性を得るために無給電素子を利用します。無給電素子の終端にリアクタンスを接続して終端条件を変化させると、無給電素子上の電流が変化するため、放射指向性が変化します。また,給電点を切り替えるごとに各素子の終端も切り替えることによって、どのアンテナ素子に給電した場合でも同様の放射特性が得られるよう制御します。